100枚目の肖像画

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100枚目の肖像画

有名な画家の個展が開かれた。 『死をめぐる100枚の肖像画』 これは画家が青年期に描いたものでそれら全てが若くして亡くなった画家のライバルがモデルになっている。落書きのような見れば笑いを催すものであったり、はたまた宗教画のような厳かな空気を纏うものもあった。 100枚目の肖像画は異質だった。 他の作品と違って描くのに何十年もかかったという。 その絵は肖像画と名付けられているが誰もいない。真ん中に柩が置かれているだけだった。その中には大量の赤い薔薇がつめられていてその横には作者である画家が祈りのポーズで描かれていた。 老いた画家は死んだライバルへ捧げた愛とインタビューで答えた。 そして個展を終えたあと、画家はひっそりと死んだ。その手に赤い薔薇を持ちながら。
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