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わたしの枝さきは 木の実どころか葉っぱも落ちてきました
今はもう、美しい花を咲かせたいなんて 望みません
この記憶もおなじように枯れてくれたらなんて
もう願いません
ただ 多くの心に届けたいのですーー
・・・きょうは久しぶりの晴天ですーーむかし、かれと初めて会った日も、こんな具合でしたーーお日さまの温かい匂いに胸がふわふわして
心地好い風が吹いて、通りすぎるときに花や若芽たちは丁寧にお辞儀をしています
きっと透明がかった群青のうぐいすが、わたしの小枝で羽を休めることでしょう
もしくは、木洩れ日に染まって角を白く光らせた鹿が、青銅の蹄を休ませるために わたしの幹にもたれ掛かるかもしれません
そうしたらわたしは、自分が人見知りなこともわすれて言うのです
手の届かない 遠い遠い天の向こうで笑っているでしょうあの子に
きっと届くはずの
ありがとうの気持ちを込めて
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