永遠の時を君と共に

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 夜の帳が下り、世界を静寂が浸している。底の見えない暗闇が見渡す限りを覆っていた。真っ黒な空には細い雲がたなびいているが、見渡しても月の姿は見当たらない。代わりに頭上には無数の星が瞬き、黒い幕の上に砂金を散らしたように光り輝いていた。  丘の上に男が一人佇んでいる。夜闇に紛れてしまいそうな黒づくめの服装に黒い髪、目だけが爛々と赤く光っている。頭には立派な角が生えていた。角の先は槍のように尖り、鈍く光を反射している。この角で貫かれた日には、どんな生き物も無事ではいられないことであろう。  男は当然人間ではない。悪魔であった。それも、今まで何十人もの魂を喰らい、何百人、何千人の命を奪った残虐な悪魔である。しかし、丘の麓にある人間の集落に、悪魔は興味すら示さなかった。  彼はただ空を見上げていた。彼の唯一であり最愛の女性を頭に思い浮かべながら、静かに何かを待っていた。
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