永遠の時を君と共に

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「人間の世界では、流れ星を見ると願いが叶うと言われてるの」  一体なぜそんな話になったのだっただろうか。思い出せないが、悪魔は一縷の希望を見出した。流れ星を二人で見ることさえできれば、この先も彼の最愛と共に過ごせるかもしれない。そう思ったのである。  悪魔は流れ星を見るために走り回った。見下していた人間に頭を下げ、敬語を使い、教えを乞うた。そこまでしても、ほとんどの人間は何も知らなかった。「よそものだから」と質問さえさせてくれない人もいた。  以前の悪魔なら怒りにまかせて人間を殺しただろう。しかし、今の彼はそうはしなかった。礼を言い、別の人間に尋ねるために立ち去った。彼の最愛以外に割く時間はなかった。そんな手間さえ惜しかった。ただ、女性を助けたくて仕方がなかった。  悪魔の努力は実を結んだ。人間の中では有名らしい予言者が、ひと月後には流れ星が見られると教えてくれた。悪魔は涙を流して予言者の手を握った。何度も感謝の言葉をくりかえす。悪魔が流れ星について尋ねた人間たちが、口々に祝う言葉をかけた。予言者は、神のご加護を、と悪魔に告げて去っていった。  神は、悪魔とよく似ているようで最も遠い存在である。加護が与えられるはずもなかったが、悪魔は初めて神の存在に感謝した。 「ひと月だ。あとひと月で流れ星が見れるぞ! 近所のあの丘なら綺麗に見えるだろうと人間が言っていた」  興奮気味の悪魔に、床に伏している女性は久しぶりに笑顔を見せた。 「ありがとう。ずっと探してくれてたのね」  静かに微笑んで、礼を言ったきり女性は何も言わなかった。それどころか、寝返りを打って、悪魔とは反対の方向を向いてしまう。時折肩が震えていた。  ようやく願い事を叶えることができるのだ。もっとはしゃぐものだと思った悪魔は困惑する。体調が悪いのかと悪魔は心配したが、彼女は顔を背けたまま首を振るばかりだった。
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