2人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「心残りがあるとするなら、貴方と流れ星を見れなかったこと」
死の直前、女性は息も絶え絶えに言った。震えながら悪魔の手を握り返す。悪魔は一層手に力を込めた。彼女を壊してしまわないように、最大限の注意を払いながら。
「流れ星が見れたら何を願ったのだ。身体が癒えるようにか。永遠の命を得られるようにか」
女性は悪魔の問いに、いいえ、と静かに首を振った。
「私が逝った後も貴方が笑えるように」
「其方がいなくては笑えぬ」
間髪いれずに入った否定に、女性は苦笑した。困った人ね、と細められた目が語っていた。
「では、貴方にとって刹那でしかない私との思い出が永遠になるように」
悪魔は首を傾げた。彼の最愛は時々、悪魔にはわからない人間の考えを口にする。
「決して私を忘れないで。貴方が忘れない限り、私は貴方の中で生き続けます」
最初のコメントを投稿しよう!