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「そもそも、私たちの夏休みは5日間しかありませんので」
2ヶ月も休んでいられるのは学生だけで、教員は教員でそれぞれ研究だか旅行だかわからない出張が多い。そんな中私たちに与えられる夏休みはたったの5日間で、その5日間は7月から9月の間で誰がいつ休むかを課内のメンバーで調整して決めている。よっしゃ夏休みだ、なんて言っている間に夏休みは終わっているのだ。
まぁ、ほとんどのメンバーがそこに有給をくっ付けて休みを増やすのだが。
「お盆はいつから帰るんだ?」
「13日ですかねぇ」
「流星群終わってんじゃん。でも、良いよなぁ、帰る場所が綺麗な空の下だなんて。流星群なんてわざわざ観に行くものじゃなくて、ついでに観るもの、たまたま観えちゃったもの、だろ?」
「流星群、わざわざ観に行く人もいますよ? ふと思い出して庭に出たりとか……そりゃぁ、庭の上空は八ヶ岳ほどではないですけど。でも私は別に……」
「観ないか」
「……そうですね」
「まだ星は嫌いか?」
「まさか。好きすぎて、見上げられないんですよ」
「『あなたはどうして星を見ないのですか?』『好きだからです』って、相変わらず意味不明な奴だな。そういうの何て言うか知ってるか?」
「何て……? あまのじゃく?」
「好き避け、だろ? 学生たちが言ってたわ。好き避けだのツンデレだの、佐崎もそれなんだな」
好きを避けていることに違いはないのだが、違うような気がする……が、彼は今時の若者から吸収した覚えたての単語を嬉しそうに発し微笑んでいる。
「そうですね」
あえて否定をしない私の苦笑が彼の目にはどう映っているのか、彼は「だろ」と、得意満面を私に向けた。
「好きだったら、シンプルに、好きと向き合えば良いじゃないか」
そして、真面目な表情でこう言い切った。
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