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気持ちの変化
帰って洗濯物を取り込んで、晩ご飯の準備をする。その間もちょっとの隙にスマホを開く。DMは届いていない。翔馬のコメント欄は、あれから止まっていた。
___DMで話してるのかな?どんな話をしてるのかな?
何を考えてるんだろうと、自分のことなのにハッとする。たかがサイトでのやり取りに、こんなに気持ちを引っ張られていたら、ストレス解消のために始めたのに、逆効果になってしまうじゃないか。
チキンカツは衣をつけて、帰ってきた順番に揚げることにして、肉じゃがとサラダとお味噌汁を作った。そしてまた、スマホを開いた。新しいコメントがあることを示す赤いレ点があった。
___なんだ、DMじゃないのか
“楽しいことを探してるんですか?僕と楽しいことしませんか?”
___うわ、これ、気持ち悪いかも?
文字だけなのに、まるで不倫に誘われてるようなコメントだと思った。それでも、ここで話をするだけなら誰でもいいかと思い、返事を返す。
“楽しいことなんて、なかなかありませんね”
すぐに返事が来た。
“僕なら、楽しいことを教えてあげられると思うよ、どう?DMしない?”
DMが送られてきても私が許可しなければ、未開封のまま返すことができるようになっている。どうしようか考えていたら、赤いレ点がDMが届いたことを知らせた。早っ!
《ミハルさん、その人とDMするのですか?》
___あ、翔馬さんだ!
コメント欄でのやり取りを見て、翔馬さんが気にしてるのかな?そう思ったらうれしくなった。
〈いいえ、まだしていません。なんだか馴れ馴れしい気がして。楽しいことを教えてくれるっていうのが、どういうことかまったくわからないし、どうしようかなと思ってました〉
《下手に関わらないほうがいい種類の人間だと思います。まぁ、僕がそんなことを言える権利はないんですが。ミハルさんが心配ですから》
___これは…心配されてる?気にしてくれてるってこと?
〈翔馬さんがそう言うなら、DMはしません。翔馬さんとやり取りしてるのが一番楽しいですから〉
《そうですか、それはよかった。安心しました…って、なんか変ですね》
〈え?そんなことありませんよ、誰かに心配してもらえるとか気にかけてもらえるって、うれしいですね〉
この時の私は、舞い上がっていた。私が他の男とDMをすることを気にする翔馬の言葉がうれしかった。
___私のことを特別に思ってくれてるのね
そう言う翔馬は、おそらくたくさんの女とやり取りしてるはずだ。なのに、私には他の男とのやり取りをさせないようにしている…ここで気づけばよかった…。
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