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遠回しな告白?
できるだけ平静を装った文章を送った。私一人が勝手に舞い上がっているということを、知られたくなかった。どんな返事が返ってくるのだろうか。
《ミハルさん。こんなサイトのやり取りですが、色々話せるのはミハルさんしかいませんし、ある意味でこれはお付き合いだと思ってます。それに、僕はこのお付き合いに好きだという気持ちが入っているので、背徳感もあります。お互いに既婚者ですから。たとえそれが、僕だけが感じている背徳感だとしても》
〈翔馬さんだけが感じている背徳感?〉
《そうです。ミハルさんが僕に対してなんの感情もないのならそこには背徳感はないでしょう?でも、僕にはあるんです。これはどうしようもありません》
_____それって、私のことが好きだということ?だよね?
どうしよう?これは遠回しな告白だ。これが目の前に本人がいてのセリフなら、その態度や顔つきで気持ちが推し測れるだろうけど、DMのやりとりだけではわからない。私も背徳感を感じていますと言ってしまうと、本格的な不倫になってしまうようで、こわい。うれしいのに、うまく答えられない。
なんて返事をしようか悩んでいたら、またDMが届いた。
《すみません、ミハルさん。さっきのことは忘れてください。僕のことを負担に思ってしまったのなら許してください。僕はただこうやってミハルさんと話をしてるだけでうれしいのですから。もうやり取りしないとか、そんなこと言わないでください》
私は急いで返事をする。
〈そんなふうに思ってもらえて私もうれしいです。正直に言って私にも背徳感があります。おかしいですよね?会ったこともないのに、多分好きになってしまったんだと思います〉
送信。
思わず送ってしまった内容を読み返して、少しだけ後悔した。やってしまったと、思った。好きだなんて言ってしまった。でも、あんなふうに言われたら、そうなってしまうと思った。
すぐに返事がきた。
《ホントですか!僕だけが一方的に思ってたわけじゃないんですね?やったぁ!今のミハルさんからのDMを何回も読み返しています。僕の人生で、こんなにうれしい返事はなかった。ありがとうございます》
_____こんなに喜んでるなんて、意外かも
〈そんな、私なんかのことでそんなリアクションがあるとは思ってませんでした〉
《喜ばないわけがない!ミハルさんはとても素敵な女性なんです。その女性の人生に僕が少しでも関われたとしたら…この出会いに感謝します》
〈私も。これからもよろしくお願いしますね〉
《こちらこそ。もっともっと、ミハルさんのことが知りたいです。深く知りたいです》
ドキリとした。私のことなんて、適当にでっちあげたミハル像なのに。それでも、その時は深く考えていなかった。どうせサイトの中だけのミハルなのだからと。
〈私にも翔馬さんのことを教えてくださいね〉
《なんでも聞いてください》
背徳感を交換し合ったことで、距離が近づいた気がしてこれからの翔馬との関係がどう変わっていくか、楽しみになった。
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