美羽はうら大好きっ!

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美羽はうら大好きっ!

 「趣味は読書、白鳥麗です。以後、お見知りおきを」 …固い。 とにかく固い。 (自己紹介なんだからもっと明るくやれよ) 誰もがそう思っていたであろう。 …まぁ、誰も口に出そうとはしないが。 見た目からして、なんとなくキャラが分かるのだ。 サイドで三つ編みされた黒髪、マスクで隠された口元、厚い眼鏡をかけているため、目の奥は見えない。 賢そうではあるが、お世辞にも明るいとは言い難い。 「し、白鳥は新入生挨拶出てたから皆知ってるよなー。白鳥、とても良い挨拶文だったぞ!」 無理に明るい空気を作ろうとしていることが分かる。 担任のぎこちない笑顔が何よりの証拠。 「……どうも」 やはり素っ気ない。 (なんだあいつ) 美羽は頭を抱えた。 (人見知り発動してるし!ばか〜) 「じゃ、じゃあ次、15番」 「笹野健でぇす!趣味は昼寝、出来ることなら一日中寝てたい。最近はアニメとゲームばっかしてます。よろしくー!」 どっと笑いが溢れた。 今急に空気の酸素濃度が変わったと思う。 「先生も一日中寝ていたいな〜。はい、次16番どーぞ」 麗、やはり無理だったか。 …まぁ、今に分かったことじゃないが。  『うっ、うぅっ…せんせ、そうくんがね、いじわるしてくるの』 麗は保育園年少の頃、男の子たちから嫌がらせを受けていた。 麗は人一倍繊細で、小さいことでもむしむし泣く、女の子。 そして、とても可憐な美少女で、男の子たちにもてもて、同性の私から見ても可愛い。 まぁ、普通に考えたら、男の子なりのアピールなのだが、それは麗には通じない。 だって、麗は自分を可愛いなど一度も思ったことがないから。 それは、美羽が一番知っている。 現に麗(ナチュラルバージョン)は、大手会社に何回もスカウトされ、断り、更には 『どこの人も不思議だなぁ、私なんかよりもっと可愛い人はたくさんいると思うのに。んー、やっぱ変だね』 とか言い出す。 嫌味か? そう言いたくなるが、ぐっと我慢。 悪気はない上、真面目に言っていることだから。 麗は、昔からそうだった。 『なんか』、が口癖の、気の弱い女の子。 だから、うちが言ってあげたのだ。 泣いている彼女に、 『ねぇ!うららちゃん、うちとともただちになろ?うちがまもってあげる』 と。 麗は嬉しそうに顔を綻ばせ、 『うんっ!みうちゃんとわたし、ともだち…えへへ』 と笑った。 ズキュンッ うちのハートはそこで射抜かれたまま、麗からずっと離れられなくなった。 昔から辛口だったらしいうち。 麗以外の友達が出来ることなく12年を過ごし、麗も同様、うち以外の友達を作ったことがないまま時を共に過ごした。 『ちょっとだんしっ!うらにてぇださないでよねっ!!』 『あ…やべっ』 『ありがと…っ、みうだいすきっ!』 『べっ、別にっ?』 きっと、うち以上に彼女を知る者はいないであろう。 そんな麗、男の子にいじられていたのは自分の外見が醜いためだと思い、伊達眼鏡にマスクをつけ、生活している。 ……三つ編みは落ち着くかららしい。 まぁ、余程のことがない限り、麗の美貌がバレることは無い。 (…私の麗は大丈夫。大丈夫…!!) そう自分に言い聞かせ、安心させる。 「みう!私、先生に頼まれ事したから、ちょっと行ってくる」 学級委員長になったばかりの麗が天使の笑顔(マスクしてても私には分かる)を浮かべる。 「え…あ、うん。一人で大丈夫?ついてく?」 …過保護だなっていう自覚はあるんですけどね。 「大丈夫だよー!これでも中一だよ〜?」 「ん?あっ、そうか。もう中一かぁ。よ〜しよしっ!じゃ、行ってら」 「もう中一ですよ〜っだっ!明日ねー!ふふっ、寮の部屋決め楽しみだね!」 ふ、ふふ、だとっ!? あぁぁぁ、可愛いぃぃぃぃっ!!! 無言で悶える。 「う、うん。楽しみダナ」 わあぁぁぁっ!!! 「…?あ、じゃあまた明日ねーっ!」 「ウ、ウン。またネ」 ぎこちなく手を振ってお別れする。  そっかー、明日部屋決めかぁ。 「絶対一緒の部屋で…うひひっ」 あ……どっ、読者さん、違うんですよおぉぉぉぉぉっ!! 見捨てないでえぇぇぇぇっ、もう読まんとこ、とかやめてえぇぇぇぇぇっ! や、本当に、やめて、っ!! 百合とか考えてないんでっ!!! 違いますうぅぅぅっ!!! いや、確かに可愛いんだけど… あっ、だから違うのおぉぉぉっ!! ほんと、あの、いや。 あの、ね? うん…違うんです、はい。 本当に失礼致しましたあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!
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