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日曜はよく晴れていた。
聡太は持参した動物図鑑を片手にウキウキしている。
サファリパークの駐車場はたくさんの車で埋めつくされていた。好天の日曜だけにどの家庭もお出かけしようとなったのだろう。おかげで、ここサファリパークは大盛況といったところだ。
駐車場を降りてゲートをくぐると、案内役だろうか困り顔でうろちょろしている青年がこちらに寄ってきた。
「い、い、いらっしゃいませ。何名様でしょうか」
明らかに挙動不審だ。喫茶店のような接客をしてくる。
「2名です」
「そうですか。うん、えーと、今その、車が今なくなっちゃってまして」
「え? 回るための車がない? 行けないんですか?」
「うーん、その、あ、そうだ! うん。ちょっとお待ち下さい」
信じられないくらいテーマパークの接客からかけ離れている。首を傾げて青年を待つと、青年はもっと信じられない行動に出た。
ぶうぅぅううん。ききぃ。
青年はオープンカーに乗って戻ってきたのだ。何事か。わたしは状況を飲み込めないでいた。
「おまたせしました。どうぞー」
どうぞー。
って……。
ガードするもの、ないじゃん。
左右と上、ガラ空きじゃん。
サファリパークなのに。
食べられちゃう。
壁も天井もないから、食べられちゃうじゃん。
失格じゃん。
このクルー、失格じゃん。
「いや、はは、オープンカーですよ。冗談きつい」
「大丈夫です。こちらをご覧ください」
サファリパーク失格クルーは自信満々といった様子で後部座席の後ろを指さした。長い二股になった金属の棒が置かれている。
「さすまた、ございますので」
うおい。
サファリパーク失格クルー、うおい。
「いや、死んじゃうでしょ」
「お客様、ご安心ください。大丈夫です。さすまたは最強の武器と言われているんです。相手が近づいて来れないわけですから」
サファリパーク失格クルーが自信満々にそう言った。そのままグイグイわたしと聡太をオープンカーに乗せだした。
「……だ、誰がそんなことを言ってるんですか?」
あまりに毅然として言うので訊ねると、サファリパーク失格クルーは間髪入れずに答えた。
「門倉さんです」
……そうか。……門倉さんか。
……………そっかそっか、門倉さんか。
………………………いや、誰、その人。
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