週末のジュラシックパーク

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「では、動物たちとの最高のふれあいをお楽しみください。サファリパーク、レッツゴー!!」  サファリパーク失格クルーはまるでUSJクルーのように言い放ち、何やらボタンを押した。ここだけ練習しているのだろう。見事にのせられた聡太が「レッツゴー!」と言いながら失格クルーとハイタッチをしている。  わたしと聡太は見ず知らずの門倉さんを信じて決死の旅へ向かうこととなった。   『草食動物ゾーン』  羊やアルパカがのどかに牧草を喰み、その向こうにキリンの姿も見える。聡太の目は夜空に浮かぶ星のように輝いている。  連れてきて良かった。オープンカーだけど。わたしは仕方なく、見ず知らずの門倉さんがおすすめする武器さすまたを握り締めていた。猛獣ゾーンでこれを駆使して切り抜けるしかない。  そんな危機感をよそに、聡太は近寄ってきたヤギの頭を撫でてきゃっきゃと楽しい声をあげていた。とにかく草食動物ゾーンだけでも楽しもう。  と、突如としてオープンカーが揺れた。  ずんっずん重く大きな音が鳴り、わたしと聡太を大きな影が覆った。見上げると、とんでもなく大きな象がわたしと聡太の真上にいた。  踏み潰されたら一巻の終わり。わたしは思わず握り締めていたさすまたから手を離し、両手で頭を覆った。  ひいぃぃぃぃ。  情けない声が出そうになるのをなんとかこらえる。しばらく何も起こらないのでやっとこさ目を開けた。象はわたしと聡太をなんだか優しそうな目で見下ろしている。  そうか。象は優しい動物だ。踏み潰すなんてことはしないだろう。ほっと胸をなでおろしたところで、信じられない光景をわたしは見た。 「象さん、はい、どうぞー」  聡太がさすまたを象さんに手渡していた。  どわあぁぁぁぁっす!!  唯一の武器!  聡太、象さんにまさかのプレゼンツ!  パオォォォン。  嬉しそうに受け取る象さん。  象さんは鼻を器用に使い、中村家の命を握るさすまたを巻き上げていった。  堪忍してけろ。堪忍してけろー。
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