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中学校を卒業した後、ミチルの部屋を一階へ移したところから計画は始まった。父・姉弟の三人暮らしには少し広い二階建ての家で、幼い頃からミチルとアラタは二階にそれぞれの部屋があった。そして、唯一の掃き出し窓がある一階の部屋を父が寝室として使っていた。
「高校生になったら私が朝ご飯やお弁当の準備をするから、部屋を一階に移してもいい?ほら、朝早く起きることになるからアラームや物音でアラタやお父さんを起こしてしまうかもしれないからね。実際、お父さんが今まで一階の部屋を使っていたから私たちグッスリ眠れたの。ねっ? 今までずーっと朝ご飯の支度してくれたし、これからは自分たちで出来る事をやってみるから! お父さんは朝ゆっくり休んでいてね」
二人で考えた部屋を移動するための口実は、見事父の気持ちを動かした。父が二階へ、ミチルが一階へ移動することによって、夜中でも窓から外へ出やすい動線を確保することに成功した。光月家の玄関ドアにはアンティークなアイアン製のドアベルがついているため、夜中に玄関からは外へ出られないという判断からこの計画を実行することにしたのだった。
父が寝たことを確認したアラタが一階にあるミチルの部屋へ行き、二人で窓から外へ。外から部屋へ戻る際にも、ミチルの部屋の窓から入るという計画だ。窓の鍵は開けっ放しになるが、夜中には人ひとり道を歩いていないような田舎だから問題ないという結論に至った。
父に見つからないように外出する理由――それはミチルとアラタが占いを修行していること、占いの店をオープンしたということを内緒にしているからだった。
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