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使い古したタオルを持って部屋へ戻ってきたアラタを見て、ミチルは庭へ続くウッドデッキ上で物音に気をつけながら予め準備しておいた靴を履いた。それに続いて、アラタがそろりと外へ出てゆっくりと慎重に窓を閉める。
庭の砂利を避けながら、つま先で芝の上を歩く。まるで泥棒のような忍び足をしばらく続け、やっと家に声が届かない距離まできた時に二人は深く息を吸い込んだ。
「ぷはーっ。この瞬間だけは毎回ドキドキしっぱなしだね! 息するのも忘れちゃうくらいドキドキしちゃう」
「はぁはぁ。月に二回だからいいものの、この緊張感ですでに少し疲れる」
「ふふふ。ほーら、背筋伸ばして元気出して! 今日も三時まで頑張るわよー!」
「はいはい。それじゃ時間も限られているし、少し早足で行くとするか」
満点の星空の下に広がる、暗く曲がりくねった田舎道。家がポツンポツンとあるだけで、視界の90%近くが自然の深緑色と夜空の紺色に染まっている。
二人が小走りを始めて約十分が過ぎた頃、ふもとにアンティークショップがある小高い丘まで辿り着いた。
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