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プロローグ
「あんんっ……待って……」
「激しくしてって言ったの誰?」
「でもっ、……こんなに激しくする……な……んて、あっだめっ……」
「イけよ。俺の前でいやらしい顔して、啼きまくって果てるとこみせろ」
なにこれ、ほんとに悠太?
激しく揺さぶられながら、昼間とはまったく違う顔の彼に胸が高鳴る。
それでもぜんぜん嫌じゃない。むしろドSが極まったセックスに、興奮が止まらない。自分には願ってもないシチュエーション。このまま溺れてしまいたい、そう思いながら意識を手放した。
──それは数時間前のこと。
高校の同窓会。片想いの相手をとっつかまえて居酒屋を出たわたしは、薄暗い路地裏で、彼に思いを告げていた。
「……私ね、悠太のこと好きなの。高校の時からずっと」
「は……? え、なに、ほんと?」
悠太のくりくりの目が皿になる。人間の目ってこんなに広がるんだ。そりゃびっくりするよね。ずっと友だちヅラしてきたわたしにそう言われたら。
「ほんと。ねぇ、わたしと結婚しよう? 悠太が欲しがってる、社会的信用ってやつを得られるし、セックスの相手にも困らないでしょ?」
「えええっ!? け、結婚!?」
「そう。わたし、悠太と結婚したい」
「えっと……あの……」
「後悔なんてさせない。結婚生活が幸せで穏やかなものになるよう努力する」
わたしは片想いの彼に、そう結婚を切り出した。煮え切らないこの気持ちを抱えて10年、いいかげん潮時だ。
「わたしと結婚するのが無理なら、もう悠太に会うのやめる。友だちのままでいるなんて、わたしにはできないから……」
きょうで終わりにしよう。楽しくてうれしくて、幸せだった片想い。性別を超えた親友として過ごしてきた10年、告白もせずにここまできた自分の、捨て身の求婚劇。
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