お供は猫である

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 さすがに丸腰で行くわけにもいかないのでせめて準備をさせてくれと諦めたカルマが必死に訴え二人は買い物に行った。 「あ、チモモンだ」  カルマがパァッと嬉しそうに笑うとアニマルショップへと駆けていく。店の前では掃き掃除をしているチモモンが数匹いた。  小型の動物を戦いのサポートとして訓練し販売しているアニマルショップ。かなり高額なのでアニマルを手に入れるのは憧れであり優秀なギルドである証拠だ。当然二人はまだ手に入れていない。  その中でも特に女性に人気なのが可愛らしい見た目のチモモン、猫を品種改良したものである。可愛いし低レベルの魔法と、ある程度の回復魔法が使える。が、臆病な性格で戦いにはあまり向いていない。戦い終えたご主人様の傷を癒すのが一般的な使い方である。  しかし傷を治すのであれば魔法使いの回復の方が強く、薬もかなり効果が高いので、サポート役と言うよりはただのペットとして娯楽で飼われる。そのためアニマルの中ではダントツで人気がない。上級ランクを狙っている者たちからは役立たずという認識だ。 「僕もいつかチモモン飼うんだ」 「回復ならカルマができるだろ」 「いるだけで癒されるよ、心が!」 「あっそ」 「それに寿命も長い、五十年くらい生きるらしいから晩年まで一緒。まさに人生のお供、いやお友だよ!」 「はいはい」  放っておくといつまでもチモモンを見ていそうなカルマを引っ張って道具屋へと向かった。 「今回はなんでこんな難しいミッションをやろうと思ったんだよ」 「もうすぐ親父さんの命日だろ」  カルマの父親は討伐中に亡くなっている。当時は本当にお金がなく葬儀を上げることもできなかった。 「報酬はパラミヤの原石。これくらいはやらないとな」 「あ……」  その原石は父が欲しがっていたものだ。それを手に入れればギルド名は一気に売れて人も集まるはずだとそのミッションに挑戦し命を落とした。カルマの慎重すぎる性格も、この出来事からのトラウマだとソーマは思っている。 「そっか……そうだね、ありがとう」  父は弱かった。周りからもお前にギルドは無理だと言われ続けていた。それは父を知っている者たちからは今も言われ続けている。それを払拭するためにもこの報酬は必要だ。  気合いを入れた様子のカルマを見て、ソーマは微笑む。カルマの父親を供養するためでもあるが。カルマの真の実力を普段カルマの事を馬鹿にしてきている連中に見せるにはもってこいのミッションだと思ったのだ。自分も頑張らなければ。
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