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 俺は、観光地となったこのペンギン村のナンバーワンだ。  なんのナンバーワンって、なまけものの、かな? 「あ、ぺんぎんだ!」 「かわいいー」 「こっち向いて!」  俺は、やってきた観光客の人間にあいそうよく、よちよち歩きしてアピール。  お尻ふりふりも忘れずにな。 「ペンギンの餌だって、これやってみる」  おっ、さっそく餌ゲットか。  今日は、早くありつけそうだ。  うまくペンギンらしさアピールできたようだな。  しかし、そんな事をしてるのは俺だけだった。  他のペンギンは住みかにこもって、工作に夢中。  どいつもこいつも、熱血だ。 「角度が足りない!」 「浮力が足りないでござる!」 「モーターが動かない! 調整だ!」  俺のいるペンギンの村には、今一大ブームが到来していた。  空を飛ぶペンギンが現れた事で、みんな憧れを持つようになったのだ。  ペンギン用のツバサ製作に励んでいる。  蒼穹の空を見上げては、毎日毎日飽きもしない。  ペンギンは普通は、飛べないもんなんだよ。  あいつは特別。  刀で剣風をおこして飛ぶとか、普通できないから。  トリだけどとべない。  それがペンギン。それが個性でいいじゃねーか。  なんてぼやいてたら。 「トリとしてのプライドがあるんだよ。俺達だって飛べるなら、飛びたいさ」  とか熱血村ペンギンに言われた。  ふーん。そんなにいいもんかね。  飛ぶって。  俺達には海があるじゃねーか。  ないものねだりするより、身近なもんで満足しとこうや。 「そんな事いって、昔あんたが飛ぼうとしてツバサを怪我したの知ってるんだからね」と通りすがりの村ペンギンが発言。  なっ、何でそれを知ってやがる。 「前できなかったから今も出来ないなんて、だれが決めたの。成長した今ならがんばれば飛べるはずよ」  どこまでも熱血な村ペンギンが去っていった。  頑張れば、俺だって飛べる、か?  いつかの夢を再び、この手につかめる、か? 「うわー。ツバサがおれた!」 「エンジンが火を吹いたぞ! あちちちっ」 「ぎゃー、穴があいてる!」  いや、やっぱ無理。  手先が器用な人間とかならともかく、俺らペンギンだしな。
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