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うっとりとして語る日登美とは対照的に、綾は先ほどから顔を青くして涙を流していた。
「……日登美、あんた、あのときからずっとそんな暮らしを……」
「……何、その目。お姉ちゃん、まだ私が頭おかしくなったと思ってるの?」
綾は何も答えずに泣きじゃくる。その反応は、日登美の問いを肯定したも同然だった。
「お姉ちゃん、私言ったでしょ? もう少しで完成しそうだって。私の理論はもうほとんど証明されているの」
日登美は綾に向かって、まるで小さい子供に言い聞かせるかのように話しかける。
「私考えたんだ。人が死んだら魂が離散しちゃうのって、きっと体が生きてるときは、魂をぴったりくっつけておく機能が働いてるからなんだよ。それが止まっちゃうと、魂もばらばらの粒子になって飛んでいっちゃう」
綾はもはや日登美の話を聞いてはいないようで、嗚咽を漏らしながら「ごめんなさい」「私のせいで」と呟き続けている。
しかし日登美も同様に、綾の言葉を聞いてはいなかった。
「ばらばらになった魂をまたひとつに集めるためには、死んじゃった体の代わりが必要でしょ? だから私、毎日この部屋で頑張って念じるようにしたの。私の体のどこかで動き続けてる、魂をくっつけておくための機能を、活性化させるために。この部屋の中を漂ってる健二の魂に、こっちに来てもいいよ~って、呼びかけるために」
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