或る部屋と魂について

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「あー、もう。本当にお姉ちゃんは何も分かってくれないんだから」  日登美は表情を曇らせてため息をついた。そして俺に話しかけてくる。 「ねえ健二、どうする?」 ――聞くまでもないだろ。綾から連絡が来てからずっと、俺たちがずっと話してたことだ。 「そうだね」  日登美はベッドから立ち上がると、流し台の方に向かった。シンクには下水道への入り口を塞ぐためにガムテープが貼られており、その横には綺麗に研がれた包丁が置かれていた。 「私たちの復讐を終わらせないとね」 ――ああ。どっちにしろ、このまま帰すわけにはいかないだろう。 「そうだね。ついついテンションが上がって全部話しちゃったけど、お姉ちゃんはやっぱり信じてはくれなかったもんね」 ――綾はお前のことを精神病院に入れるつもりだぞ。 「分かってるよ。だからこそ、だよね」 ――ああ。 「けど、うまくやれるかな。お姉ちゃんが健二を殺したときは、犯人だってバレなかったみたいだけど、私とお姉ちゃんは家族だからなぁ。すぐに疑われるよね」 ――馬鹿、そもそも死体が見つからなければ事件にもならねえよ。 「あっ、そっか。そうだよね」 ――綾はお前以上に馬鹿だからな。ゴミに出すなんて下手なことをしたが、もっと確実に見つからない方法がある。 「すごい、さすが健二!」 ――ああ。だから絶対に大丈夫だ。早くやってくれ。 「分かった!」  日登美が包丁を手にして綾に迫ると、綾は全身をガタガタ震わせながらも這って逃げようとする。 「待ってよ、お姉ちゃん」  その足に包丁が振り下ろされると、ギャっと間抜けな悲鳴を上げて綾は床に倒れ込んだ。思いっきり埃を吸い込んだようで、激しく噎せ返る。  ああ、うるさい。最後までうるさい女だ。 ――日登美、早くやってくれ。 「うん、健二!」
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