或る部屋と魂について

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 悲鳴が上がったのは、最初の数回だけだった。  後は、日登美が包丁を突き立てる音が響くばかりだ。  ドラマで聞くような、鋭い音は聞こえなかった。  ただただ、ドン、ドン、という鈍い音。  それと、水槽を揺らして中の水を零しているような、びちゃびちゃという音。  そういえば、俺が殺されたときもこんな音が聞こえていたような気がする。  そんなことを考えている間に、綾は痙攣することすらやめていた。  ああ、ついに。  ついに、やり遂げた。
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