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1.メモも持たない僕達は
自動ドアに人の影が映る。僕は鼻息を荒くする。
「いらっしゃいませー」
お客さんが入ってくると同時に、僕は昨日教えてもらった通りに元気良く挨拶をした。
しかし今の人、少し怪しい雰囲気だったな。髪が長くてキャップを被っていたから顔がよく見えなかったが。身体は細くて背中は曲がっていたけど、それでも僕よりは背が高そうだったからおそらく男性なのだろう。
服装もナイロン生地のパーカーに下も同じ生地のジャージのようなものだった。
全身真っ黒なのに、真っ青のキャップと白髪交じりの長髪がアクセントに感じ、一瞬お洒落に見えた。これで差がつくお洒落上級者の差し色コーデ、という文字が脳内ファッション雑誌の表紙で踊る。
でも待てよ。今の人ってもしかして……
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