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「なぁ、荒玖。見て見て。この画像の猫、すごい可愛くないかっ?」
風が心地よく吹き抜ける学園の屋上。
俺の隣でスマホの画面を指差しながら柊渚が楽しそうに話しかけてくる。
白くきめ細かい肌が太陽の光に照らされ更に白く染まる中、絹のように艶のある茶色の髪が風に遊ばれてふわりと揺れる。
その髪が頬を撫でたことで、海のように透き通った蒼い瞳が擽ったそうに細められた。
俺――大翔荒玖は、そんな渚を見てからチラリと画面に視線を落とした。
「あー……そうだな。確かに可愛いな」
「だよなーって相変わらず反応うっすいなぁ」
表情ひとつ変えず応える俺に、渚は苦笑を漏らす。
これでも本当に可愛いと思っているんだけどな。
俺と渚が住むこの空海島は、日本からはかけ離れた場所にある孤島だ。
その割には人口は多く、一応、観光地としても登録されている。
街並みも都会とさほど変わりなく、孤島と言えど店の種類も豊富で住み心地のいい島だった。
ただ、ひとつだけ変わっていることがあるとすれば、この島には魔法が当たり前に存在すること。
公にはされていないが、体質的に素質があるもののみ扱うことが出来る。
そして、俺と渚は昔からの親友だ。
俺は家系の呪いで普通の人間よりも永くこの世界を生きている。
今の高校生の見た目で、軽く百五〇年近くはこの空海島で過ごしてきたという、ちょっと変わった事情を持っていた。
そんな俺の百年以上前からの親友が柊渚だった。
俺にとっては命の恩人で、大好きな人だ。
好きとは、親友としてではなく恋愛感情として想っているということだが……その想いを伝えたことはない。
同性で親友という枠組みのせいで告白なんてする勇気もなく、百年以上この気持ちを隠して渚の隣にいる。
そんな渚も事情があり先にも言ったように、百年以上生きている長命の一族の生まれだった。
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