第1話「君と知らぬ場所へ」

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「なぁ、荒玖(すざく)。見て見て。この画像の猫、すごい可愛くないかっ?」  風が心地よく吹き抜ける学園の屋上。  俺の隣でスマホの画面を指差しながら(ひいらぎ)(なぎさ)が楽しそうに話しかけてくる。  白くきめ細かい肌が太陽の光に照らされ更に白く染まる中、絹のように艶のある茶色の髪が風に遊ばれてふわりと揺れる。  その髪が頬を撫でたことで、海のように透き通った蒼い瞳が(くすぐ)ったそうに細められた。  俺――大翔(やまと)荒玖は、そんな渚を見てからチラリと画面に視線を落とした。 「あー……そうだな。確かに可愛いな」 「だよなーって相変わらず反応うっすいなぁ」  表情ひとつ変えず応える俺に、渚は苦笑を漏らす。  これでも本当に可愛いと思っているんだけどな。  俺と渚が住むこの空海島(そらうみじま)は、日本からはかけ離れた場所にある孤島だ。  その割には人口は多く、一応、観光地としても登録されている。  街並みも都会とさほど変わりなく、孤島と言えど店の種類も豊富で住み心地のいい島だった。  ただ、ひとつだけ変わっていることがあるとすれば、この島には魔法が当たり前に存在すること。  公にはされていないが、体質的に素質があるもののみ扱うことが出来る。  そして、俺と渚は昔からの親友だ。  俺は家系の呪いで普通の人間よりも永くこの世界を生きている。  今の高校生の見た目で、軽く百五〇年近くはこの空海島で過ごしてきたという、ちょっと変わった事情を持っていた。  そんな俺の百年以上前からの親友が柊渚だった。  俺にとっては命の恩人で、大好きな人だ。  好きとは、親友としてではなく恋愛感情として想っているということだが……その想いを伝えたことはない。  同性で親友という枠組みのせいで告白なんてする勇気もなく、百年以上この気持ちを隠して渚の隣にいる。  そんな渚も事情があり先にも言ったように、百年以上生きている長命の一族の生まれだった。
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