第34話「君と繋ぐ、未来へ。」

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「時間をとってしまってすまなかった」  少し離れて待機していた俺たちに、落ち着いた様子のアルトが声をかけてきた。 「大切な人との別れなのだから仕方ないさ」  おおらかな笑顔でそう言う冬季にアルトは小さく笑って礼を言う。  冬季も大切な人を失ったことがあるから、気持ちがわかるのだろう。    俺はそんな二人の様子を暫く見つめてから、頃合いを見計らってアルトに声をかけた。 「気になったことを聞いてもいいか」 「なんだい?」 「まさかとは思ったんだが、もしもリトが記憶もろとも消えていたら、フィーネの人たちも俺たちも、あんな過去があったことを忘れてしまっていたのか?」 「…………」  沈黙したままじっとこちらを見つめる蒼い瞳を、俺もまたじっと見つめ返す。 「……どうしてそう思ったんだい?」  あくまでもしらを切るつもりのようで俺は眉根を寄せた。 「前に、他の人の怨念がリトに吸収されたって言ってただろ。んでからさっきのリトの物言いからして、そうなんじゃないかって思ってな」 「なるほど。……そうだね。リトの中に吸収されたのがたとえその思いだったとしても、正確には存在ごと吸収されている。だから、リトが消えれば自ずとその過去は薄れる……もしくはなかったことになる。もちろん俺がまだいるからまったくではないが、改変されるだろうとは思うよ」  だからこそ、リトはアルシアと同じ選択を取りたくなかったのか。  てっきりアルトのことだけなのだと思っていたが、そうではなかったらしい。 「でも、忘れていい過去ではないからこそ、俺はリトの選択は間違っているとは思わないけどな。その執念はすごいと思うけど」  横で話を聞いていた冬季が薄く笑みを浮かべてそう言う。  こいつがこんなことを言い出すとは珍しいな。
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