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「ナツちゃん……?」
「ぐすっ……うぅ〜……! いかないでぇ……!」
泣き出すナツに戸惑う渚は、それでもふっと笑顔を作って青い髪を優しく撫でた。
「ナツちゃん、ありがとう。ナツちゃんが泣いてくれるから俺は泣かないでいられるのかもしれない」
「ナギサ……」
涙に濡れた顔を上げたナツに、なおも表情を崩さず微笑みかける。
そんな二人をティオが優しい顔をして見守っていた。
「きっと、これは最後じゃないよ。いつかまた会える日が来るって信じてる。だから、ナツちゃんも信じてほしいな」
「……ぐすっ……うん……がんばる」
服の袖でゴシゴシと涙を拭いてぎこちない笑顔を作るナツ。
そんなナツを宥めるように、黙って立っていたティオが「偉いわね」と頭を撫でた。
「そうよね。これが最後じゃないって、私も信じているわ。……元気でね」
「ティオさん…………はいっ」
嬉しそうに笑顔で応える渚に、ティオも満面の笑顔で頷いて手を差し出した。
その手をしばし見つめてから握手する。
俺も続いてティオと握手を交わした。
「スザク、ナギサと幸せになってね。また会えたら、ナツに会いに来て」
「ナツ……」
初めて名前を呼ばれたことにも驚いたけれど、そうしてまた会うことを願ってくれたことにも驚いた。
胸にぐっとくるものを感じながらそれを隠すようにしっかりと頷く。
「……あぁ。必ず。それまで、元気でいろよ」
「うん。スザク、ナギサまたね」
「うん。またね、ナツちゃん」
最後にナツと渚はぎゅっと抱き合うとようやく体を離した。
そして、今度は美晴とハルがこちらに近づいてくる。
「三人とも元気でね」
「ハルさんもな。たぶん、俺は渚と荒玖とは違う場所に戻るだろうけど、二人も元気でいろよ?」
「大阪、だったか? 俺たちとお前は会おうと思えば会えるから問題ないけどな」
遠いは遠いが。
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