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「うーん、二人の年齢的にはちょっと無理があるが雰囲気っていうかなぁ。なぁ、レオ?」
いつの間にこちらに来ていたのか、レオに同意を求めるように尋ねる。
「確かにそう見えるよね。じゃあ、ナギサはスザクの弟かな?」
「えぇ?! す、荒玖が、お兄さん?」
チラリとこちらを見た渚が頬を赤らめていて、なんだか妙な気分になってきてしまった。
つか、なんでそんな顔で見るんだよ?!とツッコミたかったが、ぐっと飲み込む。
「バカ言うな。渚はどう見ても俺の恋人以外ありえないから」
「わ〜惚気けられたー」
わざとらしくパタパタと手で顔を扇ぐレオに痛む頭を押さえる。
こいつ、人をからかうのは最初と変わってねぇな……。
「ふふ、楽しそうだね」
俺たちのアホな会話に穏やかな声が入り込んできてそちらに顔を向けると、楽しそうに笑うアルトがいた。
「お別れの挨拶は済んだかな? そろそろゲートを起動するよ」
「ゲート?」
首を傾げる渚にアルトがコクリと頷く。
「あの中央にある天水晶を使って君たち異世界人を元の世界へ送るんだよ」
アルトが顔を向けた方を見ると、宙で青白い光を放つ天水晶が見えた。
なにもないこの空間に唯一ひとつだけある大きな石。
あれは転送装置のようなものらしい。
「他の人を中央にある石の側に移動してさせてくれると助かる。いいかな?」
そうお願いされた冬季は快く引き受けてくれて、部屋の中を観察している他の異世界人のところへ向かってくれた。
その後ろ姿を一瞥してから渚に声をかける。
「俺たちも行こうか」
「あぁ」
笑顔で頷く恋人に笑いかけてから見送ってくれる人たちに背を向けた。
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