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そんなアルシアの横でふわふわと宙に漂いながら、大きく手を振るリルが元気な声を上げた。
「スザクもナギサもまたなーー!! 次ここに来たときには、俺様がいい店紹介してやんよーー!」
「せめてマトモな店にしてくれよ?」
「その言い方じゃ俺がマトモな思考じゃないみたいじゃないかーー!」
「ふふ、じゃあ、私もリルさんと一緒にいいお店を見つけておこうと思います」
リルの言葉にアルシアがぐっと握りこぶしを作ってそう言ってくれるので、俺と渚は顔を見合わせて小さく笑った。
アルシアと会うのは、きっとこれが最後だ。
けれど、こうして『次』を言葉にしてくれることが、嬉しかった。
「…………そろそろいいかな?」
「あ、アルトさん、すみません……! お願いします!」
アルトの声に渚が慌てて返事をする。
それにしっかり頷くと、ゆっくり目を閉じた。
「それじゃあ、ゲート・オープン――」
ふわりと風が吹き上げ、白い光が俺たちを包み込む。
目の前は真っ白な世界に変わり、何も見えなくなる。
それでも、繋いでいる渚の手のぬくもりだけは確かにそこにあった。
「荒玖」
「うん?」
白い世界の中でも確かに聞こえる愛おしい声。
「大好きだよ」
「あぁ、俺も同じ気持ちだ。渚とならこの先の未来もきっと幸せに変えていける。だからこれからもずっと隣にいてくれ」
「……うんっ」
ふわりと風が頬を撫でるのを感じ、俺も目を閉じた。
「次元帰還魔法」
こうして、俺と渚の奇妙な異世界への旅は終わりを告げた。
だけど、きっとこれは別れじゃない。
レオたちと約束したように、また会える日がくることを信じているから――。
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