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「荒玖、大好きだよ」
それなのに、逃してくれない渚の声に、今度は自分の頬が熱を持つのを感じた。
「〜〜っ!……っかったから……!」
「あはっ、照れてる。かわいい」
「うるさいぞ……」
嬉しそうに俺の顔を覗きこもうとする渚の肩を押して離れさせてから、ゴホンとひとつ咳払いをする。
幾分か恥ずかしさがマシになったのを見計らって、蒼い瞳を見つめ返した。
恥ずかしがってても仕方ない。
こうして言葉で愛を伝えられるのは、当たり前ではないのだから。
だから、俺も精一杯、言葉にしなければ。
君がそうして伝えてくれたように。
「……俺も、渚のことを一番愛してる。何度も伝えてきたけど、その気持ちはこの先もずっと変わらないから」
「……荒玖」
「何年経っても、何十年経っても、この命が終わるそのときまでお前のそばにいる。渚が望んでくれるのなら、渚と誓った永遠の果てまでもずっと。二人で紡いでいく物語のエンディングを見るまで……」
「…………」
俺の言葉に、渚が目を丸くして、驚いたような表情を浮かべる。
けれど、その表情はすぐに崩れて、ふっと目を細めると幸せそうに笑ってくれた。
「……さ、すがに……ちょっと、キザすぎたな、いまのは……」
思い返せばなんてことを口走っていたのだろうか。
テレビドラマなどでよく見るクサイ言葉なんて自分は絶対に口にしないと思っていたのに。
いくらなんでも今のはねぇだろ……と後悔していると隣を歩く渚が小さく笑った。
「あは、なんかおれ、ダメかも」
嬉しそうに、けれど、どこか物足りないような顔でそう言う渚の表情に、今なにを思って、何を求めてくれているのかすぐにわかった。
わかるからこそ、それがとてつもなく嬉しくて俺は薄く笑みを浮かべる。
「……キスして欲しいくらい喜んでくれたのか」
「……うん。だから、部活終わったあと、荒玖の家でたくさん……してほしいな」
「さすがにこっちの世界じゃ街中でなんて出来ないしな」
放課後までお預けというのが、ものすっっっごく残念ではあるが。
こればっかりは仕方ない。
というより、絶対キスだけで終われるわけがないので、帰ってからにするしかないというのが正解だ。
「でもその分、してもらえたときが、すごく嬉しいし幸せだから、全然大丈夫」
「そうか……。そうだな」
渚がこうして隣にいて笑ってくれる。
お互いに心を通じ合わせて、幸せを共有して。
きっとこれからも俺たちはそうして続いていくのだろう。
まだ、この先の未来がどうなるかなんてわからないけれど、渚と一緒に手を取り合って歩んでいきたい。
いつまでも、どんな未来でも。
繋いだ想いは変わらないと信じているから。
ずっと。
キミと、一緒に――。
end.
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