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「陽。おばあちゃんの家、取り壊す事になったから」 母さんから突然告げられた言葉。 「へぇ。そうなんだ…。」 「他人事じゃないのよ?まだ片付けて無いものが沢山あるんだから手伝って欲しいの。久しぶりに帰って来たのに悪いのだけど…。」 「…分かったよ」 ばあちゃんが亡くなってから10年が経ち、俺は23歳になっていた。 今は実家を離れ、会社員として働きながら一人暮らしをしている。 実家の隣にあるばあちゃんの家は主を失った後もそのままの姿を保っていた。 木造の平屋、青いトタン屋根、昭和の香りがするボロボロになった建物からは時代の流れを感じる。今までよくもったもんだなぁと思える様な寂しく侘しい姿をしてそこに建っている。 (…変わらないな…ばあちゃんち…) ガラガラ… 薄く、開くと独特の音をたてる玄関の開き戸。コンクリートで固められた玄関の床…。 「カビ臭っ!」 主を失った部屋は独特のカビ臭とホコリ臭さがあった。 母さんが定期的に掃除をしてはいたのだけれど、生活臭が留まる事の無い、建物自体が骨董品みたいな場所はそんなものなのかもしれない。 『陽!靴は!?』 ばあちゃんの声が聞こえてくるような気がした。 (靴はちゃんと揃えてあるよ) 習慣付いたお陰で俺は必ず靴をきちんと揃えて置いている。
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