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「片付けるっつったって何からやればいいんだよ…」
家具はもうほとんど何も無かった。
小さな居間にあったはずのブラウン管のテレビ、丸いちゃぶ台、ジリジリとうるさい音をたてて鳴っていた黒電話…ばあちゃんの家はまるで昭和にタイムスリップしたみたいな物が沢山置いてあったっけ…。
「あ…」
一つだけ残されていた木製の古いタンスがあった。
(これから片付けるか…)
タンスの中には沢山の小物や写真、それからハガキや手紙何かが詰め込まれていた。
「これ…捨てていいのかな…」
ばあちゃんの思い出を捨てるのは何だか忍び無くて、俺はその思い出達をビニールの袋の中へと詰め込んだ。
モノクロで色褪せた写真、使い捨てカメラで撮影したであろう画質があまり良くない写真、そして…。
「俺の写真だ…」
古い写真と一緒に出てきたのは幼い頃の自分の写真だった。
(父さんが渡していたのか…?)
幼稚園、小学校の低学年の頃、そして赤ちゃんの頃。
赤ちゃんの頃の写真は今まで見た事もないように目尻を下げ、目を細めながら歯を見せて笑うばあちゃんの姿があった。
俺をしっかりとその腕に抱きしめていた。
「なんだよ…こんな風に笑えたのか…」
写真を持つ手から力が抜けていく…。
ストン…
「あ…」
手から滑り落ちた写真は裏がえってしまった。その裏側には…
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