第二話 気付いていた

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第二話 気付いていた

「無駄です」 私がぼそりと(かえで)を探そうかなと言うと、(そう)くんがそう言った。 「どうして?楓なら何か知ってるんじゃないの?」 私の顔を少し呆れたような表情をして見た蒼くんはやっと立ち上がったので、私もつられて立ち上がった。 「姉にも僕たちの姿は見えていません」 「あ・・・」 彼の疲れ切ったような顔を見て、もう既に家族や色々な人に話しかけて気付いてもらえなかったのだろうということを悟った。 「ねえ、あなたのお葬式は?どうして私の方の会場に来てるの?」 「・・・。隣でやってます。友達とか親戚にも話しかけてみたけど、誰も気付いてくれないし・・」 呆然と歩いていたら、隣の私の会場にたどり着いたという。   「私たちって同じ日に死んだの?一緒に事故に巻き込まれたとか?」 「・・。それはわからないけど・・、僕が気付いた時は病院で、亡くなった僕の周りで家族が泣いているところでした」 蒼くんの家族という言葉に、私ははっとして、母や父の姿を探し始め、祭壇の近くの椅子に身体を丸めてむせび泣いている母の姿を見つけた。 横に座っている伯母が母の身体を支えて背中をさすっている。 私は母の近くにふらふらと行くと、申し訳ないと思った。 あんなに明るかった母が、土のような顔色をして、髪もぼさぼさで泣いている。 遺影の写真にもう一度目をやった私は、あんなにバカみたいに笑っている写真を選んだりしてと思ったが、あの顔が、母が愛した娘の顔なのかもしれないと思い、やるせなくなってその場を後にした。 クラスメイトともう一人のクラスメイトの弟が同時に交通事故に合い、俺は生まれて初めて葬式というものに参加した。 正直亡くなった女子生徒とも、その友達とも一度も会話をしたことがなく、とても驚きはしたが、どのような気持ちで参加すればいいのだろうかと思っていた。 学校の制服を着て、他のクラスメイトになんとなく混じって式に参加し、亡くなったクラスメイトの父親の挨拶を聞いていた時、俺はおかしな状況に気が付いた。 参列者の中に、なにやら透けている人間が二人いるのだ。 二人とも背格好は同じぐらいで、共に制服を身に着けている。 気味が悪いので目に入れないようにしていたのだが、ちらちらと盗み見るうちに、その一人が亡くなった女子生徒のように見えてきてしまった。 ということは一緒にいるのはその友達の亡くなった弟なのだろうか・・。 自分はそういう霊的なことに鈍感というか、怖いテレビ番組をみても何も感じないし、霊が出ると有名な廃墟を探検するような動画を見てもゾッとしたりもしない。 金縛りなどにもあったことがないし、いったいどういうことだと混乱した。 他のクラスメイトに話してみようかとも思ったのだが、生憎俺には親しい友達がいない。 なんだか寒気がしてきて、これが悪寒というものなのだろうかと思いながらもう一度確認してみると、少年の方は静かに佇んでいて幽霊っぽいのだが、女の子の方の動きがあたふたとしていてコミカルで、なんとも幽霊らしくない。 人付き合いは人一倍ニガテだし、友達などいても面倒なだけだし、実際学校では一人でも大丈夫なのだが、今日のような日は誰か話す相手がいてくれるとありがたかった。 やっと葬儀が終わり、徒歩で家に向かっている間、先ほどのことを思い出し、自分はその手のモノが見えてしまう体質なのだろうかと恐ろしくなった。 知りたくなかった事実だなと思いながら、家族にそういう体質の人間がいるだろうかと思いあぐねていると、背後から声をかけられた。 「すみません・・」 何も考えずに振り向くと、そこには先ほどの透けている少年がいた。 「・・・!」 学ランを着たその少年は、真っすぐな瞳を俺に向けて見えてますよねと言ってきた。
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