第一話 思い当たらない

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第一話 思い当たらない

平静でいられるわけがない。 初めての葬儀、告別式。 参列者から、安らかに眠ってほしいという声が聞こえる。 現実を受け入れることができない。 死んだ後の自分など想像したことがなかったが、祭壇に飾ってある遺影を見た瞬間、私は息を飲んだ。 まさか・・、ありえない。 友人たちが皆で私を騙しているのだろうか、その手には乗らないと思ったが、私はドッキリにかけられるような有名人でもないし、ただの17歳の平凡な女子高生だ。 これから女子大生になって彼氏ができて、無難な会社のOLになって、寿退社をして幸せなお母さんになる。 そんな未来が待っているはずだったのに・・・。 私の存在が周りの人には見えないらしく、おろおろしていると、参列者の中に半透明の少年が並んでいるのが見えた。 彼は恐らく私と同じ状況だというのに、あまり動じていないように見える。 私は恐る恐る彼に近づくと、あの・・と遠慮がちに声をかけた。 ぼんやりと立ちすくんでいた少年は、私を見ると驚いた顔をした。 「まなかさん・・」 驚いたのは私も一緒で、彼の名前を確認していた。 「(そう)くん・・だよね?」 こくりと頷いた彼は私の親友の弟で、たしか2歳年下のまだ中学3年生だ。 「あなたには私が見えるの?これ、どういう状況?」 2歳年上の私よりも大人びた雰囲気の彼は、たぶん、まなかさんが想像している通りの状況だと思いますと言った。 「そんな・・」 考えれらるのは私もこの少年も既に亡くなっているということ。 ということは、(かえで)は、実の弟と親友の私を失ったことになる。 「・・・どういうこと?」 気が付いたら私はここにいて、それまでの記憶が全くない。 「・・・」 私から目を逸らした蒼くんは何やら事情を知っていそうだ。 自分と同じような背丈の彼を覗き込むと、私は彼を問いただした。 「ねえ、何か知ってるの!?楓は大丈夫なの?」 「すみません・・」 声を絞り出してそう言った蒼くんは、顔を覆ってその場にしゃがみこんでしまった。 何が起こったの? 私は訳が分からなくなって、彼が落ち着くまで一緒にその場にしゃがみこむしかなかった。
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