頃来

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「木曜日のこの時間にまた伺います。お昼の時間にすみませんでした…あっ、コースターもう一枚どうぞ。良かったらご自宅でお使いください」 バッグからもう一枚コースターを取り出し彼らの前に置いた後、包んでもらっていたチューリップを手にした。 「栫井さん、もうひとつ聞きたい」 「はい」 「このコースター一枚、カード一枚…単価はしれてるだろ?うちがチューリップの販売本数が倍になったとしても栫井さんの利益は僅かだ。メリットがある?」 「あります。うちの店の名前とアドレス等を個々のフィルムに入れるか貼るので。お時間ありがとうございました。失礼します」 今日やることはやった。木曜日に返事をもらって、ダメならその日か金曜日に他のお花屋さんへ行く。このノベルティ作戦で儲けようというのではなく宣伝活動だ。ホームページでは掴めない客層の開拓が目的だから。 店に戻り、今買ったチューリップは1輪挿しにして飾ることにする。そして玲央がハサミまで買ってくれていたことを思い出して、今更ながらとても嬉しくなった。 その夜玲央と電話で話をしたが、昼間何をしたかなんて一切聞かれなかった。翌日も同じこと。ただ 「昼間店を離れても、昼飯はskipするなよ」 それだけは毎回言われた。
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