頃来

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私が光里ちゃんの名前を‘クリスマスを連想できる’と言ったことが正解だと言い、その私の言葉で昨日のクリスマスイヴが誕生日だったと思い出したと言う光里ちゃん。誕生日を知らなかったらしい三鷹くんが言えなかった?と聞くが彼女は忘れてたと言い 「誕生日もクリスマスも…この5年間は無縁だったもの…」 静かにそう言った。私は思わず息を飲み息を止めると玲央が私の背中を撫でる。玲央の手に合わせて音を漏らさないようゆっくりと息を吐く…玲央の手は優しいが話の本質を聞き逃さないように鋭い視線を二人に突き刺している。玲央にとって三鷹くんは苦楽を共にした、親友以上、戦友以上のかけがえのない存在だから。玲央は光里ちゃんでなく、三鷹くんの心配をしているんだ。 「もう…光里が一人で頑張るのは終わったからね。これからずっと一緒にお祝いできるよ」 三鷹くんが光里ちゃんを抱きしめてそう言ったことで、彼が全ての事情を知った上で彼女を受け入れていると理解できて玲央の視線が柔らかなものに変化した。 「大丈夫そうだね、玲央」 「そうだな…聖がさっき言ってた‘光里が恐れることがあるなら俺が抱き抱えて乗り越えればいいとも思う’ってあり得ないと思ったが、今少し理解できた気がする」 そう言った玲央は 「聖、すぐに帰れ。二人で誕生日を祝ってこい」 と続ける。 「えーわからないでもないけど、私たちもHappy Birthdayの乾杯だけしようよ。光里ちゃん、何歳になったの?」
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