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21 元副会長、幼馴染みの秘密を知る
今の間は肯定なんだろうな。
僕はそう受け取った。
「あるんだな。」
「…まあ、うん。」
「やっぱりな。」
編入早々にあれだけ目立ってしまえば、不快に思う人間も、面白半分に興味を持つ輩も、そりゃいるだろう。
「で、どんな連中が、とか…少しはわかってるのかな。」
コーヒーを口にしながらそう聞くと、御池君は記憶を手繰るように目を閉じた。
「入って来てる情報は2つ。
会長親衛隊の関係者。
それから委員長に懲りずに敵対している3年の屑グループ。」
委員長、と言う所で隣にいるルプスの気配が僅かに動いた。
そうか。2年のルプスが学園内の治安を仕切るのを面白く思わない3年がいるのか。
で、早くもルプスの傍にいる僕に目を付けたのか。
…まあ、な。何処に行くにもあれだけくっつかれていれば、親しい関係だと思われてもおかしくない。
会長親衛隊関係者は…ま、十中八九、食堂での件だろうな。蹴りを入れたしな。
目をつけられるのは時間の問題だっただろう。
御池君が続ける。
「と言っても、会長親衛隊の方は封じ込めは簡単だ。
問題は3年だな。」
「えっ、そうなのか?」
意外だ。
会長周辺の人間の方が、学園内では力を持っていると思っていた。
「逆逆。
生徒会親衛隊に良い家のボンボンが多いのは間違いないけど、そういう家とか立場を背負ってる人間の方が無茶はしにくいよ。
ガキみたいなちゃちい嫌がらせはするけど、犯罪行為迄はビビってやんない。
前科なんかつけたら、忽ち一族の厄介者だからな。」
「なるほど、そんなものか。」
「そうそう。
本当に警戒しなきゃいけないのは、既に一度何かをやらかして、家族からも見放されてるような自棄になってる連中。
つまり、3年の劣等生達だな。」
「劣等生…。」
「言い方悪いけど、そういう呼び方をされてる数人の不良集団があるんだよ。
元々が中学時代に結構荒れてて、全寮制にぶち込まれたって人達だ。」
「へえ。」
そんな生徒達も入学を受け入れてたのか。意外だ。
伯父はどういう意図で…。
「中学でも連んでた連中らしくて、1年の内は大人しくしてたんだけど、2年に上がって直ぐに新入生相手にレイプ未遂事件を起こした。
でもあくまで未遂だったから、謹慎程度で済んじゃったんだ。」
「被害者は無事だったんだな。」
「めちゃめちゃ無事。」
御池君はそう言ってコーヒーを飲んだ。
やっぱチョコばかりは口の中が甘くなり過ぎるよな。
「全員を返り討ちにしちゃったくらい無事。」
「返り討ち。」
「ですよね、委員長。」
「えっ」
御池君にそう声をかけられたのは、またしてもルプスだった。
「…別に…アイツら弱かったし…。」
「ルプスが被害者だったのか。」
「被害、なかったけど…。」
ルプスは複雑そうな苦々しい顔で僕に言った。
「なかったけど、ムカついたからケツにチョーク突っ込んでやった。」
「過剰防衛です委員長。」
ドヤ顔で語るルプスに突っ込みを入れる御池君。
「…そんな感じだったんで、そいつらは謹慎だけになったんだけど、当時の風紀委員長だった先輩が御室さんに惚れ込んじゃってさ。
風紀にスカウトしたんだよ。」
「なるほど。そういう経緯が…。」
それは僕が風紀委員でもスカウトしたい有能人材だったろうと思う。
適材適所。力を抑え込むにはより強い力、というのが手っ取り早い。
迅速さを問われる現場では特にそうなんだろう。
「でもそれ以来、その連中はずっと委員長を恨んでるみたいでさ。
確かにチョークで処女を奪われたのはどうかと思うけど、自分達は委員長にチンコ突っ込もうとした癖にな。器がちっせえわ。」
御池君はそう憤慨している。
「違うぞ。只チョーク突っ込まれたからだけじゃない。
リーダーの鴨田が痔だったから、見られたのを恨んでる。」
「おい、ルプス…それ言っちゃダメな事じゃ…。」
「そこにチョーク突っ込まれたから、余計痛かったんだと思う。」
「そうだったんですか?!」
「鴨田ってあの金髪のややイケメンだよね?
へえ~、そうだったんだあ。意外~。」
「……。」
デリカシーの無い人間に秘密を握られると地獄だな、と俺は その鴨田という不良を気の毒に思った。
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