23 元副会長、自覚を促される。

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23 元副会長、自覚を促される。

僕を狙っているかもしれないという鴨田は、何だか聞けば聞く程、不憫な人物に思えた。 どうも他人事に思えなくなってきたな…。 いかんいかん、加害者候補に感情移入しては。 「か、鴨田とやらのシモの事情は置いておいて、」 「シモの事情の話じゃないよ。なまじ男好きする美形に生まれてしまったせいで尻の純潔を散らされまくった哀れな境遇と、それによりスレてしまってちゃちい不良グループのトップに上り詰めてしまった鴨田の話だよ。」 「…何だか本当に哀れになるからもうやめてあげてくれ。」 僕はいよいよいたたまれない気持ちになった。 だからって僕を狙うな鴨田とい気持ちもある。 いや、それは本当に置いといて。 「じゃあ、以上の事を把握した上で、ファンクラブの打診は…」 「受けて欲しいな、風紀としては。」 御池くんは即答したが、それにルプスが待ったをかけた。 「しのには俺がついてる!!」 「…委員長、最近仕事滞ってますよ。」 「うっ」 「勿論、教室にいる間や寮部屋では委員長が一緒ですし、俺達もいますからガードできますけど、放課後貴方には仕事があるでしょう。」 「むぅ…」 「只でさえ今期の風紀、人員不足なんですから、ずっと委員長や俺らが佐藤に張り付いてるなんて無理ですからね。」 「……。」 ルプスは黙り、御池君と園田君は しょうがないなというように苦笑いした。 日頃から苦労していそうだな、御池君。 「佐藤はその、ファンクラブ希望の小さい1年生達を見て、どう思った?」 不意に園田君に問われる。 「どう…とは? まあ…中学生のように可愛らしいなと思った、かな。」 正直な感想を述べると、園田君が頷いた。 「だろうね。 でも、それくらいの方が護衛としては適任だ。」 そうだろうか。 僕はあの5人の容姿や体躯を思い出してみた。 細く小柄な体格、可愛らしい顔立ち、声も未だ高めで可愛かったが、あれは地声なのか作為的なものなのか。 「織名は中学の頃に空手の全国大会覇者だし、日生も同門だよ。」 「へっ?」 「あとの3人が誰かはわからないけど、彼らの交友関係の中の生徒達なら、多分似たり寄ったりの子達じゃないかなあ。」 「……そうだったのか。そんな風には…全く。」 あんな華奢な彼らが、空手の…? 意外過ぎて言葉が出てこない。 「まさかそんな子達が来るとはね。 確かにあの時の佐藤の蹴りは鋭くて惚れ惚れしたもんね。」 「…やめてくれよ…。」 「温厚そうな優男が豹変するのもなかなかグッと来たし。」 「……。」 「それで即動くとか、お目が高いよね。 織名と日生なら人品骨柄、問題無いと思うよ。 佐藤を任せても大丈夫じゃないかな。」 園田君がそう言うと、御池君が頷き、ルプスはうぐぐ、と不満気な呻き声を洩らしたが、異論を唱える事は無かった。 「佐藤はどうしても目立つからね。」 園田君が言うが、 「そんな事、此処に来る迄言われた事は無かったぞ…。」 と、僕は返す。 だが。 「この際だから自衛を促す為に言うよ。 これ迄佐藤の周囲がどんな風だったのかは知らないけど、編入生って事を抜いても、君は十分目立つよ。 身長、スタイル、顔立ち、雰囲気。 ちゃんと自覚してね。」 園田君がそう言いながら僕の眼鏡に指を掛けて大きくズラすと、ルプスが慌て、御池君は目を見開いた。 「…ふた昔くらい前の少女漫画?」 「…しのの眼鏡に触るな園田。」 「すいません。 でも、本人自覚無いみたいだったので。」 「……僕は人並みだ…。」 「ほらね?」 僕は確かにド近眼だが、自分の顔がどの程度のものかくらいはわかってるぞ。 ずっとこれで生きてきた訳だし、人並み程度だからこそそれなりに告白もされ…。 「佐藤に告白してきた子達は、かなり勇気を出したんだろうなあ。 玉砕は覚悟だったんだろうね。」 「…勇気?まあ、告白とは大なり小なりそんなものでは?」 僕が首を傾げると、園田君は首を振りながら言った。 「佐藤。 君は高嶺の花レベルの容姿だと思うよ。 幸い眼鏡が似合ってるし、それで軽減されてるから、すっぴんは見せないのをオススメする。」 「???」 「…まあ、とにかくその魔法の眼鏡は大事にね。」 「…ああ。」 取り敢えず、ファンクラブを承認する事は決まった。 外皮チワワ、中身ゴリラのSPとして。
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