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24 元副会長、生徒会役員達に噂される
「へえ、SPついたんだ。」
「SPじゃない、ファンクラブだ。」
「同じだろ。」
生徒会室である。
神薙は上がって来た申請書を見ながら言い、それに答えたのは獅子神だ。
書類には佐藤 忍ファンクラブ代表者の名前や暫定会員達の名前、佐藤の写真が貼られていた。
それを眺めながら、神薙はうっとりと呟く。
「良いよねえ、佐藤君。
私も入ろうかな、佐藤君ファンクラブ。」
「フン。俺はファンになんかならない。
俺はアイツの奴隷になるってきめてるんだからな。」
「すごくバカっぽいのに志高く感じてしまうのは何故だろう。」
奴隷て。
神薙だけでなく、その場にいた全員がドン引きした。
因みに放課後で生徒会室役員勢揃いしているので、書記・犬飼、会計・御子柴、庶務の一ノ瀬兄弟もいる。
ここで各自の説明をつけると、書記の犬飼 洋太は寡黙ワンコ(大)。
会計の御子柴 悠はチャラ男(親衛隊はセフレという噂)。
庶務の一ノ瀬 雅、奏は一卵性双生児(マスコットポジ)。
実はこの、会計と庶務ポジはチャラか双子かどちらに据えるかで悩んだポイントでもある。
どうでも良いか。
このような懐かしの王道生徒会の中に王道転校生をぶっ込めば、いにしえの王道ストーリーが繰り広げられて生徒会と王道と理事長達が纏めて糾弾され学園閉鎖とかに追い込まれたりするんだろうが、転校生が常識人・佐藤なのでそうはならないのだった。
但し、奇妙な変装をしていなかろうが、夜の街で暴れ回っていた過去を持っていない普通の編入生だろうが、王道生徒会はかまうのである。
だって退屈してるから。
「それにしても、あの蹴りはお見事だったよね。佐藤君。
良い脚してたなあ。直に拝ませてくれないかなぁ。」
「黙れ脚フェチ。きもい。」
ここの寡黙ワンコは確かに寡黙だが毒舌だ。
「酷いよ!大体ね、洋太が嫌がって十分に堪能させてくんないから他に目が行くんだからね!!」
「訴えるぞストーカー。」
寡黙で無害な筈のワンコキャラが毒舌になったのにはきちんと理由があった。
入学して同じクラスになった時に、チャラ御子柴が犬飼に一目惚れしたのだ。
だが、生憎 犬飼は部活の剣道一筋だった為、色恋には全く興味が無かった。
なので、出会ったその日から熱烈アプローチして来た御子柴を、まさか本気だとは思わず適当にしか相手にしなかった。
すると、それが悪かったのか、御子柴がエスカレートしていき、半ストーカー化した。
犬飼の方が体格的に勝る事もあり、今の所被害は知れているからと放置しているが、犬飼の口は悪くなってしまった…。
「佐藤に変な事するなよ。」
「しないよ!あんまりにも洋太がつれないから言ってみただけだもん!」
「つれなくなくても言うな。風紀にチクるからな。」
「ひでえ!!」
以上が犬飼と御子柴の関係性である。
「脚か。確かに細身の割りに威力はあった。」
獅子神がうっとりと記憶を反芻し、神薙が何故か悔しげにそれを見ている。
「佐藤君には私が先に目をつけたんだからね。」
「1日やそこらの差でそんなの関係あるか。
選ぶのはアイツだろうが。」
選ぶも何も、こんなくだらない会話が繰り広げられてる事すら、佐藤には与り知らぬ事であるし、知っても何方も選ばないし、万が一聞いてもスルーする。
マジで奴隷って、何だ。
「それにしても、御室が張り付いてるのが気に入らないな。まさか同室になってたなんて。」
神薙が呟くと、獅子神も眉を寄せた。
「気に入らねえ。
何とか俺と同室に…。」
「役員降りたらワンチャンあるかもね。3年になってからだけど。」
獅子神に答えたのは御子柴だ。
この学園では生徒会役員は諸事情から1人部屋と決められている。
生徒会役員は漏れなく親衛隊持ちだし、同室者なんかになると色々不都合な事に巻き込まれるからだ。嫉妬とか嫉妬とか嫉妬とか。
「なるほど…じゃあ3年になってからが勝負だな。
今の内に1年のめぼしい奴、選定しとくか。」
「…最後に笑うのは私だからな。」
獅子神と神薙の言い争いに、他のメンバー達は思った。
(そんな事よりさっさと申請書の承認してやれよ。)
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