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澪音には一年前、高校入学記念として専属執事が与えられた。執事の名は一二。訳ありで雇われた男である。
歳は二十六で、やや高めの身長に少し長めのくねった髪が頬のあたりで巻いている。とりわけ、幸薄そうな薄い唇に加えてやる気のなさそうな目つきはまさに見た目損。彼は意外にも真面目かつ世話焼きなのだ。
そんな二人が今日も顔を合わせるーー
オフホワイトが基調の部屋にはダリアが随所に程よく咲き、小洒落た洋家具がよく映える。
そこにある、貴族令嬢が腰掛けそうなテンプレ的椅子には紅茶を嗜む澪音の姿があった。まるでこの世界の先行きを憂うような面持ちで。外の景色を見やっていることも助けて世界観はバッチリだ。
そこへ内線で呼び出された一二が、黒のモーニング姿で一歩踏み入れる。
「失礼致します。お呼びでしょうか?」
「あら、やっと来たのね。ナンバースリー」
「……失礼ですがお嬢様。苗字の漢数字、勝手に加算しないで頂けますか」
「ふ……っ」
「笑っちゃってるじゃないですか」
「いえ、笑ってないわ。
それよりほら、見てごらんなさい。あの広い青空はどこまでも続くのよ」
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