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 あれは小学校6年生の時だった。俺は当時、極度の人見知りというか、人間不信で、周囲と上手く関われなかった。  人間不信になった原因は俺の家族にある。今では冷静に振り返ることができるが、俺の家族は破綻していた。  父親は浮気性で、よそに女を作り、家にはほとんど寄り付かない。帰ったら帰ったで、酒に溺れては暴れる。母親は父親からの暴力を最初は大人しく受けるだけだったが、ある日逆上して父親にやり返し、激しい夫婦喧嘩を繰り広げるようになった。  その現場を見ていられなかった俺は押入れに籠もり、ヘッドホンをつけ、大音量で音楽を聴いてやり過ごしていた。  そんな日々を過ごすうちに、次第に神経がすり減っていったのだが、さらに追い打ちをかけるようにして、父親は俺にも暴力を奮うようになる。母親に助けを求めようとしても無駄で、自分に向かってこなければいいとばかりに、こちらを見向きもしなかった。  その結果、俺は最も信頼できる存在のはずの家族が信じられなくなり、誰も信じることができなくなったというわけだ。  そんな俺を気にかけてくれたのは、当時のクラス担任だった宮坂迅という男で、今思えば、彼が俺にとっての初恋だった。    
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