どうしても勝てない人

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どうしても勝てない人

 優(まさる)は不満だった。 勉強はクラスで一番、徒競走もマラソンも学年で一位を譲ったことがない自分。 なのに、どうしても勝てない人がいる。  『でんすけ』だ。 でんすけは昔の卒業生らしいが、小学校の全ての競争で記録を残している。 そろばん、九九、英語、徒競走、マラソンなど、全て一番はでんすけなのだ。 それだけでも十分おかしいが、おかしなところは他にもある。 全く時代が合わない。 そろばんの競争など今は行なっていないし、昔は英語などあるはずがない。 それなのにでんすけはどちらの記録も持っている。 おかしいじゃないか。 優は担任にその疑問をぶつけた。 担任は、 「うーん。昔の事だから…… 校長先生ならご存知かもしれないわね」 と答えた。 優は校長先生に会うため校長室へ向かった。 少し緊張しながらドアをノックする。 どうぞ、と、穏やかな声が聞こえた。 優は中へ入り、 「優です。訊きたいことがあります。でんすけって誰ですか? 学校の競争はたくさんあるのに、全ての記録が一位って本当? それと、昔の記録にも今の記録にも残っているっておかしいよ」 優が一気にまくしたてると、校長先生は優をソファに座らせ自分は優の向かいに座り、こう言った。 「そうだな……少し昔話を聞いてくれるかな?」  優がうなずくと、校長先生はゆっくりと話し始めた。
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