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娘のヒミツ
「実は、私はこの山に昔から住んでいる大蛇なのです。あなたの笛の音に誘われ、このような姿に身を変え聴きに来ていました。でも……それも今夜までです」
「なぜ?」
「私は長年この地で修業をし、そして今夜それが終わりました。私は明日龍となり空へ登ります。そしてその時辺りは大嵐になり、山は崩れ川は氾濫するでしょう。どうかあなたは早く山を下り、できるだけ遠くへ逃げてください」
ただ一つお願いが、と娘は続けた。
「このことは、決して誰にも話さないでください。もし話してしまったら、私はあなたの命を貰わなければなりません」
娘はそう言うと、夜の闇にすうっと消えてしまった。
若者が家に入ると中で少年が心配そうに若者を見ていた。
「聞いていたのか?でんすけ」
少年はこくりと頷いた。
「さて、どうしたものか」
若者はでんすけに向かってそう呟いたが、
「兄さ、おらが何か言ったら兄さがおらに話したことになってしまう。おらは何も聞かなかった。兄さの思うようにしたらええ」
そう言って布団に潜り込んでしまった。
若者は一晩中悩み続けたが、
「村の皆に告げよう。たくさんの村人の命と私の命ひとつ。比べるまでもないのだ」
そう決心した若者は急いで山を下り、村長にこのことを告げた。
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