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兄さがいねえ
村長は、大蛇が龍になる前に蛇が嫌う『草刈りの鎌』を使い大蛇を殺すことにした。
村中の鎌が集められ、村長と村の者たちは若者に案内され、皆でいつも娘がいた大岩へと向かった。
そして、皆で大岩めがけ必死に鎌を投げつけた。
すると、急に空が真っ暗になり、稲妻が走り、激しい雨が降り注いだ。
村には激しい雷雨と共に、大蛇がのたうちまわるような地響きが一晩中鳴り響いていた。
次の朝、激しい雷雨も地響きもすっかり治まり、村はしんと静まり返っていた。
村人たちが恐る恐る大岩まで行ってみると、昨日鎌を投げた辺りは大きな池になっており、その中央に大岩が浮かんでいた。
そして大岩に巻き付くようにして、身体中に鎌が刺さった大蛇が息絶えていた。
「村は救われた! 良かった!」
口々に喜ぶ村人の中で一人、
「兄さがいねえ」
と、でんすけが呟いた。
苦悩の末、村を救った若者は、村のどこを捜しても見つからなかった。
そしてその日から、全く雨が降らなくなった。
瞬く間に水がなくなり、田んぼの水も干上がってしまった。
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