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それぞれの気持ち
村人たちは呆然と龍が消えた空を見つめていたが、
「村長どうする……伝助を差し出さねば村は終わりだ」
「ああ。炭焼きの弥吉が命を捨ててまで救ってくれた村だ。わしも村長として村を守らねばな」
村長が辛そうに呟いたのを合図に、村人はふもとへ戻っていった。
しばらくして、炭焼き小屋から小さな影が現れた。
影は弥吉が大切にしていた笛を携えて大岩の前に立ち、弥吉と同じ構えで笛を吹いた。
しかし音は出なかった。
「やっぱり兄さのようには吹けなかったな」
そう言い残して、影はふもとのほうへと消えていった。
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