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でんすけの真実
ふと、すぐ傍の炭焼き小屋から何か音が聞こえた。
村長は、でんすけか弥吉が戻ってきたのかと思い慌てて炭焼き小屋を覗くと、なんとそこには手足を縛られた息子、伝助が居た。
縄を解きさるぐつわをとり、
「誰にこのようなことをされた?」
と尋ねると、でんすけにやられたという。
「なんということだ……」
村長は全てを理解した。
でんすけは昨晩の出来事をここで聞いていたのだ。
そして、その時すでに自分が身代わりになろうと決めていたに違いない。
伝助を村から遠いこの炭焼き小屋に閉じ込めて隠し、自分が身代わりとなって龍にさらわれた後、炭焼き小屋で私が伝助を見つけることも、きっとわかっていたのだ。
でんすけよ……なんの取柄もないなどとはとんでもない。
誰よりも賢く、誰よりも勇敢で、そして誰よりも優しいではないか。
村長は伝助を抱きしめて、
「お前にも、他の村の者にも話さなければならないことがある」
そう言って、二人は山を下りた。
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