黒の円

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 今日だって昨日だって明日だって、何も変わらない。ただ黙って毎日くり返すずっと廻る。私だって初めはきれいだった。隣りの彼女も後ろの2人もただ光っていた。今のように醜く汚れた肌でなかった体中に割れた傷もなかった。美しくかぶりつけば内側から止まることなく果汁が溢れ出る熟れた果物のような身体だった。  ある時私達は集められそこから地獄が始まった。全身を強く押し付けられそのまま地面にこ擦り付けられた。一日で身体から皮膚というもの失った。その日は皆の啜り泣く声が最後の一人が眠るまで続いていたのを覚えている。次の日からも同じ繰り返しずっと廻る。夏は燃えるアスファルトの上を走る。身体から焼け焦げた匂いを嗅ぐ。冬は突き刺さるように冷たい雪の上を走る。身体から痛みが無くなるまで。血も出なくなった。  私達に意思は無い。感情も無い。考えも無い。ただそこにある。回る廻る。不要になれば捨てられてる。今もこれからもあなた達のそばにいる。
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