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鍋奉行、怒る
ちいさなこたつで向かい合いながら、あたしと先輩は土鍋の蓋から噴き出る蒸気を見つめている。
「――宇宙だな」
「どこがです?」
間髪入れず首を捻るあたしのことはそっちのけで、先輩の整った顔はさもうれしそうに微笑む。思わずそれに魅入ってしまってから、心の中で先輩に願った。
お願いだからそのまま黙ってて。
しかしそんな願いもむなしく、先輩は口を開いてしまう。
「どこって、どこもかしこも宇宙だろう。今蓋の下で起きているのはインフレーション、ほら、来るぞ! そろそろビッグバンだ!」
あたしは先輩の口を塞いでしまいたい衝動をぐっと堪え、一心に鍋を見つめた。
宇宙かどうかはわからないけれどまあ、鍋の形は土星と思えなくもない、のか?
首を捻りつつ、あたしは鍋つかみを装着し鍋のふたに手をかけた。すき間からもうもうと湯気が躍り出る。あっという間に視界が白く覆われ、しばらくするといい具合に煮立った鍋だねが顔を出した。
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