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私の働くお城にはものすごく力が強い王女様がいます。
王女様は初めてお城に来た人たち全員に必ず勝負を挑みます。そしていつも王女様が勝ってしまうのです。お城でもトップクラスに強い魔法使いや兵士長よりも強かったので、お城の人たちからは最強王女として恐れられています。
私はそんな王女様のお世話係としていつも王女様の身の周りのお世話をしています。しかし強いのは良いことだと思いますが、もう少しおしとやかに過ごしていただきたいものです。
そんなある日、王女様宛に映画の出演を依頼する手紙が届きました。
「まあ、映画ですって? 面白そうね!」
とまあこんな感じで軽いノリの王女様は、その場ですぐにOKを出して映画撮影に行きました。もちろんお世話係の私も一緒に。
王女様の出る映画は戦闘もののアクション映画でした。王女様の役はとあるモンスター軍団の長であり暴風で敵をぶっ飛ばすという少々いやかなり物騒な必殺技を持つ戦士でした。これはもう王女様のために用意された役ではないでしょうか。
王女様も自分にピッタリの役だといって喜びました。ほとんどが戦闘シーンばかりだったからか、王女様はそれはもう楽しそうに映画に出演されました。
1ヶ月後、映画が完成したので王女様と私と他数名の家来で一緒に映画館に行きました。私は万が一のことを考えて席は一番後ろにと決めました。
映画の中でバッサバッサと敵をなぎ倒していく戦士役の王女様。
「かっこいい!!」
「王女様サイコー!!」
などなど観客の歓声があちらこちらから聞こえてきます。
いよいよクライマックスに入りました。
王女様が必殺技の暴風を敵に向けて発動する場面です。
「ようやく見つけたわよ! 覚悟しなさい!」
戦士役の王女様は敵にパンチ。その瞬間暴風が発動しました。
それを見ていた観客たちは大興奮。
しかし王女様はその数十倍燃えていました。興奮のあまり王女様はその場で実際に暴風を発動してしまったのです。
大きく凄まじい風です。やはり後ろの席に座って正解でした。王女様の性格を考えると、こうなることはもう当然。私は観客が吹き飛ばされないように固定する魔法を使いました。しかし私の魔法は人には効きますが物には効かないのです。映画館はまるごと吹き飛ばされてしまいました。
しばらくして風はおさまりました。
皆さん怒っているのでは、と思いましたがいらぬ心配だったようです。
観客から盛大な拍手がわき起こりました!
「わーい、さすが、王女様!!」
「やっぱり本物は迫力がありますねー!」
「最高の演出でしたー!」
と口々に王女様を褒め称える声が聞こえてきます。
ついでに館長もすごい拍手をしています。目にはちょっぴり涙が出ていましたけど。
そして全員が一斉に叫びました。
「今度は武闘会にぜひ!!」
その1ヶ月後、王女様はグレードアップした暴風の必殺技を繰り出し、見事武闘会で優勝し、その活躍は各国へと響き渡り、色んな国から王女様の噂を聞き付けた戦士やモンスターたちが王女様に弟子入りを願い出てきたのでした。
「やっぱり強くなるって楽しーい!」
私の苦労はまだまだ続きそうです……。
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