1/3
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ

 2322年、神奈川県某所。 「待った! 待ってくれ!」  今日こそ電車で帰らせてくれっ!  地下鉄の入り口目掛け、全力疾走。間近に迫りつつある入り口では、容赦のない電動シャッターが機械音をきしませながら降り始めている。  なぜだ?まだそんな時間じゃないはずなのに。  けれどそんな悠長なことを考えている暇などない。一か八か、その隙間めがけてスライディングをかます。瞬間、俺の後ろでシャッターが派手な音を立てて外の世界を遮断した。 「っぶねぇー、間に合った!」  肩を上下させ荒い息を整える俺に、片目に装着したグラスビューワが時を知らせてくる。午前一時。 「んだよ、まだ余裕じゃねぇか」    ったく、閉めるのなんかきっちり終電見送ってからにしてくれよ。  背後のシャッターに文句を垂らしているうちに、ようやく息が整う。  グラスビューワがまたアラートを発した。 「やべっ乗り遅れる!」    
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!