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始
2322年、神奈川県某所。
「待った! 待ってくれ!」
今日こそ電車で帰らせてくれっ!
地下鉄の入り口目掛け、全力疾走。間近に迫りつつある入り口では、容赦のない電動シャッターが機械音をきしませながら降り始めている。
なぜだ?まだそんな時間じゃないはずなのに。
けれどそんな悠長なことを考えている暇などない。一か八か、その隙間めがけてスライディングをかます。瞬間、俺の後ろでシャッターが派手な音を立てて外の世界を遮断した。
「っぶねぇー、間に合った!」
肩を上下させ荒い息を整える俺に、片目に装着したグラスビューワが時を知らせてくる。午前一時。
「んだよ、まだ余裕じゃねぇか」
ったく、閉めるのなんかきっちり終電見送ってからにしてくれよ。
背後のシャッターに文句を垂らしているうちに、ようやく息が整う。
グラスビューワがまたアラートを発した。
「やべっ乗り遅れる!」
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