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ホームに下りると同時に列車が進入してきた。
ほっとしながら端の車両に乗り込む。終電まであと30分もあるっつーのに、なんなんだよ。
ダイヤが変わったという話も聞いてないし、人の気配がほとんどないのが少し不思議だ。ま、人がいたってどうせ臭くてうるさい酔っ払いどもだ、いないに越したことはない。
がら空きの車内は座席も選びたい放題。さてどこにするか。
見渡す限り、座っている女子が一人、ドアの脇に寄りかかっている男が一人だけ。俺はしばらく目をさまよわせ、結局七人掛けのシートの真ん中に腰を下ろした。女子のはす向かいの位置だ。
さりげなく伸びをしながら女の子を盗み見る。
やった、可愛い。
年は俺と同じぐらいか、ハタチそこそこといったところ。黒髪の前下がりボブが色白の小顔によく映えていた。きれいなアーモンド型の目、大きな黒い瞳は真正面を潔く見据えている。顔の造作が整い過ぎているのが俺としてはちょっと惜しいのだが、目の保養には充分過ぎる程だ。
正面を向いたままの彼女が俺の視線に気付く様子はなく、俺は遠慮しながらもちらちらと彼女を観察した。
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