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 さよなら、俺のスカジャン――丁寧に腕の部分を抜き取られるのと引き換えに、リコの顔が間近に迫ってきた。温度のない柔らかい感触が俺の唇を掠める。  俺が目を瞠っている間に、リコは離れていった。 「あたしの気持ちがバグじゃない理由のヒントをあげますね。あたしには人の役に立つソフトは入ってないけど、普通の女の子の、中野さんの性格や行動パターンが全部プログラムされてるんですよ。わからないならよく考えて。絶対わかってくださいね。それがあたしの中野さんへのお詫びだから」    バイバイ、神田さん。    スカジャンを羽織り、最後にいたずらっぽく笑ったリコは、俺を窓の外へ突き飛ばした。
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