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こいつが中野だったのか。
俺はまじまじと彼女の横顔を見つめた。
アーモンド型の大きな目が印象的で、パーツと配置のバランスはいいが整い過ぎてないところもまぁ。なんかくやしいが、ドンピシャで俺好みだ。
中野は俺に保温シートを手渡すと車に向かい、淡い紫色の花束を手にして戻ってきた。
「ラベンダー。リコが育ててたんだ」
首を傾げていた俺にそんな回答が寄越された。リコはどこまでも人間くさいヒューマノイドだったらしい。
中野がラベンダーを一本一本海に流し始める。波があっという間にさらっていく。
「それ、俺にも一本くれないか」
中野は一瞬驚いたように目を瞬いたが、ラベンダーの束を分けてくれた。
「ロボットに花を手向けるなんて、あなたは笑うと思った」
ぽつりと中野が言った。そう思われるのも無理はない。
「ロボットじゃなくてヒューマノイドだろ。それに……リコは特別だ」
「リコはあなたに何か言った?」
「まあ、いろいろ。話したよ」
言葉を濁したが、中野にはそれで伝わったらしい。
「そう。よかった」
海に向かって一瞬微笑んだ中野は、不意に顔を下に向けた後、俺の様子をうかがうように目線をくれた。
「今日の――もう昨日か。昨日のメールにあった件だけど、今日の夜なら空いてる」
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