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ま、俺がどういう経緯でそんな国家機密組織に紛れ込んでいるのかはどうでもいいので端折るとして、とにかく俺の仕事はロボット開発。社内ではそこら中をロボットが闊歩しているから、いまさらロボットの一体や二体みたところで何の刺激にもならない。
そんな俺がなぜここまで仰天したのかといえば、ここが公共の場だからだ。
ロボットが社内から出ること、それはすなわち国家機密の漏洩を意味する。そんなVIPな奴らが地下鉄の車内にいるはずがないのだ。
じゃあ、俺の目の前にいるこいつらは一体何なんだ?
俺は背筋を這い上ってくるようななんともいえない嫌な予感を覚えた。
いや、気のせい。そうだ、そういうことにしよう。
だってもしかしたらロボットじゃないかもしれない。というか普通に考えて可能性的にはそっちのが高い。たまたま、ありえないぐらい俺の顔にそっくりな奴がいたっておかしくないだろ? うん、おかしくないよくあるよくある。
言い聞かせるようにこいつがロボットでない根拠を並べ立てながら、俺は小刻みに揺れる握り拳を反対の手で包み込んだ。背筋は相変わらずビリビリと嫌な痺れを訴えてくる。
あいにくと俺は勘が鋭いタイプで、全身に訴えかけてくる嫌な予感をそろそろ無視できなくなってきた。
――調べてみるしかないか。
震える拳をこじ開け、馴染みの仕草で右手の人差し指を屈伸させ、グラスビューワを呼び出した。
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